朱の蝶
女である事を捨てた私は
自分を奮い立たせて
極道の世界で生きてきた。

前下がりのショートボブの髪
を後ろへと掻き揚げる。

首元までしっかりと留められた
シャツのボタンにパンツスーツ
姿で、車から降り立つ。

こうして、本当は行きたくない
場所にも出向いていく。

男達に紛れて、男の格好をして
本当の男になる。

薄暗い、廃墟と化した古い
建物。

「二代目、この部屋へ
 立ち入るのは
 女の貴女は控えた方が
 よろしいかと・・・」

「余計な世話、焼かんといて
 
 シロウが持ち出した金の事
 女は、何て言うてる?」
< 31 / 451 >

この作品をシェア

pagetop