踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>


 それからおよそ30分後、戸塚の部屋──相変わらずの出っ張った腹を抱え、戸塚は本革のソファに足を組んでつまらなさそうに寝そべっていた。

 部下からの報告で翼の姿が見えないと聞き、ふてくされて指揮を筒井に任せているのだ。 そんな戸塚の部屋にノックの音が響き、入ってきた筒井の報告に勢いよく起き上がった。

「! なんだと?」

 立ち上がり、慌てて部屋から出て行く戸塚のあとを筒井が追う。

 戸塚は足早に1階に降り、階段下にある扉を開いた。

 他の部屋よりも質素な空間に見えた2つの背中に目を眇め、その背中を眺めつつ回り込む。

 その姿は、まさに待ちこがれていた人物だった。
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