踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>
「……」

 聞いた戒は、いぶかしげに少年を見つめる。

 少年は何の違和感もなく、ノートパソコンをいじっていた。

 本来なら、クローンがそこまでの知識を有している事は驚きである。

 大抵は、主人である人間が自分の満足する程度までを教育する。

「見分けがつかないのが当り前なんだけどね」

 真仁は再び溜息を吐き肩をすくめる。

「彼らはボクたちと同じ人間なんだから、どうして区別する必要があるんだか」

 苦笑いを浮かべた青年は戒を一瞥した。

「今はまだ区別する必要があるから、ボクもそうしてるけど」

 本当はしたくない──そんな言葉が続くのだろう。

 途切れた言葉に戒は小さく笑んだ。
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