輝空-koukuu-
私は、同じ学校のみんなが乗っている電車と反対の方向の電車を乗る。

くさやだの納豆だのなんだの、庶民的な家から一歩出るとすぐに都会。

立派な高層ビルなどが立ち並ぶ景色。

ハッキリ言ってあんまり好きじゃない。

空が見えないところは嫌いなんだ。

「月の山町ー、月の山町ー!」

男か女かわからない声が電車中に響く。

「おっと、降りなきゃ!」

そんな独り言をつぶやいて、急いで電車を降りると、すぐに外に出た。

青くビー玉のように澄んだ青い空。さわやかな声の鳥。土くさい田んぼのにおい。

暖かいオレンジ色の、夏の太陽。

あぁ・・・これだよ!やっぱりこうじゃなくちゃ調子が出ない。

「おお~い・・・朱音ちゃん!」

私の名前を叫びながらずっと向こうから走ってきたのは、この町のアイドル・みなみだった。

「おおっ、みなみ!お久やんけ~」

みなみは青い瞳が特徴のハーフ。金色っぽく長い髪をツインテールにしていて、いつもの通り黒と白のゴスロリファッション。

ちょっと変わったオタクな女の子だ。

いつかアイドルになるのが夢らしい。

「やっとテスト終わったんだぴょん☆これで毎日こっちこれるぴょん!」

みなみは、語尾に「ぴょん」をつけて話す。

あはは、ほんと変わった子だなぁ・・・

「おいおい、遅いぞ朱音!」

次に現れたのは、大きな黒い瞳に黒い短髪が特徴的な武だ。

白いランニングに黒い短パンという少年ファッションは、昔から変わらない・・・。

ほんとに私と同い年なのかな?

「お~ごめんごめん!飯ゆっくり食いすぎたんだ」

「あっそ。・・・ってか、なんかお前くさいぞ!」

武は鼻をつまんで眉間にしわを寄せた。

「あぁ、くさや食ってきたからだ!そっかそっか」

私が叫ぶと、みなみは目をウルウルさせて言った。

「女の子がそんなもの食べちゃだめだぴょん!」

「あぁ~いいのいいの、おいしいから」

「そういう問題じゃないぴょん・・・」



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