チェリー
私の作ったスパゲティは、どうやら和くんの口にあったらしい。

美味しい、美味しいと食べてもらえると普通に嬉しい。

「なんか嬉しい」

「え?」

「最近、謙太郎ちゃんに料理作っても一緒に食べたりせぇへんから」

「ほんまに詩織は一途やね」

「これ一途って言うん?」

クスクスと鼻で笑うと、和くんは少しムッとした顔を見せた。

「なぁ、詩織」

「ん?」

「詩織は、なんで和食系しか作らへんの?」

「謙太郎ちゃんの体が心配やからに決まってるやろ」

「ほんま、一途やわ…」

「え?」

和くんがガタッと大きな音を立てて立ち上がって、私の腕を掴んだ。

「え、和くん?」

「詩織、俺の好きな子の名前知ってる?」

「え、知らへんけど…?」

「お前やで」

「は?」

「俺な、詩織の事好きやねん」

「え…」

私が驚いて、声が出せないでいると和くんは困ったように微笑んだ。

「ごめんな…。困らせるだけやわ。忘れてえぇよ、送るからもう帰ろうや」

「…うん」

最寄りの駅まで無言。

バイバイだけ言って、私はホームに入る。
どうしても振り返ることができなかった。
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