チェリー
想い
私は、震える手で携帯を握り締める。
謙太郎ちゃんの声が無償に聞きたい。
ブチッという電話に出た音が聞こえてすぐに話す。
「謙太郎ちゃん!?」
「え?」
「あ、え…?」
電話に出た声は、女の人の声だった。
「詩織ちゃんやろ?ごめんな。謙太郎、今お風呂入ってんねんけど」
「あ、彼女さんですか…?」
「おん。なんか伝言しようか?」
「いや、いいです」
それだけ言って電話を切った。
謙太郎ちゃん…。
どうすれば良いかな。
声、聞きたかったな。
「最悪だ…」
何故か涙が出て、ふと思う。
謙太郎ちゃんは自分の携帯に勝手に彼女が出ることを許してる。
そのくらい信頼してるんだ。
私は、しのぶくんに電話をする。
「し、の…」
「詩織?」
「嫌やぁ~」
「は?」
結局それから、しのぶくんに迎えに来てもらって、しのぶくんの家に行く。
「何があってん」
「…あんな」
「うん」
しのぶくんがココアを出してくれる。
「…和くんに告白されて、謙太郎ちゃんの声が聞きたくて電話したら、彼女さんが出て…なんか分けわからへんくなった」
また、涙があふれる。