【完】無知な彼女の周り

家に帰って、荷物を解いて、洗濯物や、いろいろ片付けていると、ケータイがなった。ディスプレイには《お母さん》の文字。

「はい」

「あ、遥花?ひさしぶりね。またお父さんが転勤になったの。今度はずっと遠くよ。だから遥花、お母さんと一緒に住まない?」

また転勤か。どうやら今回は海外らしい。今までは転校して目立つのが嫌で、断わっていたが、海外となれば話は別で、言葉の通じない私をしばらくは親の元へ居れるらしい。そして、しばらくは日本は帰ってこれないらしい。
でも、私は今の学校で少し目立ってしまったから、いい逃げ道なのかもしれない。私がいなくたって物語は進んでいるし、ありきたりだって十分見た。

だったら、私はもう今の学校にいる意味ないよね。

「お母さん、私も一緒に住むよ」

「本当?うれしいわ。さっそく明日の夕方学校に行って、退学の手続きをしましょ」

「…わかった」

何にも間違ってない。妥当な選択よ。
でも、物語も学校も今週で終わりというのは、少し急な気がした。








その晩、私はうまく寝付けなかった。
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