かたっぽうの恋

敦子と美保



ひきこもり生活に幕を閉じて、私は学校に戻りました。


最初の日は二宮くんと会うのが、少し怖いと思って、教室になかなか入れなかった。




だけど…。



「おはよ、岸本」

「え!?…あ」


教室の入口の前にいる私に、二宮くんが声をかけた。


「一週間ぶりだよな。風邪、もう大丈夫なの?」


久しぶりに二宮くんに会って、胸が苦しくなるのかなって思ってた。


だけど、こんな風に心配してくれてる二宮くんを見ると気持ちが楽になってく。




「――もう、元気だよ」


「そっか。よかった…、やっぱ隣の席が空いてるの寂しいよ」


えっ!!
今寂しいって言った!?


私がいないとって、誰か録音レコーダー持ってきて!!



「そ、そんな事ないでしょ」

「ありますって、本当に。…早く教室入ろう」


この人はなんでしょうか、よくそんな恥ずかし…。








ん!?


二宮くんが私の後ろから手を伸ばして、
教室のドアを開ける。


ちょ…、わ~~!!


私の後ろ頭が二宮くんの胸板に触れた。


「ん?、教室入って?」

「んぁ!?、うっうん!」





近い、近いよ!!





そんな優しい声で、私の背中を押す手が暖かい。
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