王子様と甘い生活

プール内にはモップを持つ先輩がいた。なんだかぼーっとしてるけど、大丈夫かな?


すると後ろから声が聞こえた。



「なぁ、これ水圧だろ?強にして中センおどかそーぜ」



そう言った3年生の声と、ぶしゃあっと言う音が聞こえたのは同時で…



「きゃあぁぁ」



水圧に耐えきれず、先生の離したホースの水が、ぼーっと立っていた先輩にもろにかかった。


プール内に座り込む先輩は頭からびしょびしょで…



「悠真!」



そう言って、私は持っていたタオルを悠真に渡す。



「えっ…」

「早く!先輩のところ行って!」



背中を押すと、悠真はタオルを持って先輩の元へ走っていった。


これで…よかったんだよね。


悠真は、先輩をタオルでくるむと抱き上げて校舎の方へ走っていった。



その姿に、一瞬だけズキンっと胸が痛む。



「よかったの?」

「あっ…」



いつの間にか、後ろに立っていた坂井くんにドキッとした。

坂井くんは、全部お見通しなんだ。



「良いの。」

「でも不完全燃焼って、よくないんじゃない?」



そう言って、坂井くんはプール内に戻っていった。

よくないって、どうするべきなの?
今更、告白なんて…



この日、悠真は戻ってこなかった。


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