王子様と甘い生活
とりあえず、ワークをやってみよう。
そう思って、教科書とワークを開く。
実際に例題を解いてみるけど…全然わからないし、文章題すら読めない。確率って何?
定理って何?
これ解く意味あるの?
「うーん…わかんないよぉ、もう!」
坂井くんに教えてもらおうかな…と一瞬思ったけど。
あの日―悠真に振られた日以来、恥ずかしくて顔がみれない。別にまだ好きって思ったわけじゃないのに…!
すると突然、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「あっ、はーい」
扉を開くと坂井くんが立っていた。
しかも、なんかちょっと笑ってる?
「なっ、何?」
「困ってるかと思って」
「えっ?」
すると坂井くんはクスッと意地悪く笑った。
「さっきからうめき声が聞こえるんだけど…」
なっ、なんですって?
この部屋、壁は薄くなかったはず…ってことは、私ってば、そんなに大きい声で唸ってたの?
「で、どうする?」
坂井くんはふっと笑う。わかってるくせに、意地悪なんだから!
「っ…お願いします。」
リビングでは見向きもしなかったのに、こうして教えに来てくれたのが、すごく嬉しかった。