先生~あなたに届くまで~

「先生。」

時間が止まった様だった。

ただこちらを見る先生の目を見つめる。












「先生。
 
 苦しまないで下さい。」











先生は少し目を見開いて
何も言わずに私を見ていた。


「送ってくれて
 ありがとうございました。

 失礼します。」

私はその場の空気に耐えられなくて
慌てて車を降りて家に向かった。




バタンッ。

家の扉を急いで閉める。


階段を駆け上がったせいか
あの空気のせいか

心臓はバクバク鳴っていた。



車のエンジンの音が聞こえたのは
何分も経ってから。



その音が聞こえなくなるまで

私は玄関に佇んでいた。


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