先生~あなたに届くまで~

「何見てんの?」

ぼーっと車を眺めていた背中から
聞きたかった声がする。



背中が温かく感じた。



もう誰の声かわかっていて
振り返るのに少し時間がかかった。


緩んだ顔を元に戻す。


「おはようございます、先生。」

「おはよ、浅川。」

にこっと笑った顔で私を見る。



さっきまで会いたいと思っていたけど
いざこうして会えると
可愛いことも可愛い顔も出来ない。


“春菜の可愛さがほしい”



「浅川?
 浅川...?
 眉間にしわ寄ってるけど具合悪いのか?」


気づくと私はひどい顔をしていたらしく
先生が私の顔を覗き込んでいて
顔が一気に熱くなるのを感じた。

「うわっ!!何ですか!?
 元気です!!大丈夫です!!失礼します!!」

凄い勢いで先生から離れ教室に向かった。


顔の熱は....



引かない。



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