スマイリー
「帝大なら“負担が軽い”ってレベルだしな、あいつ。先生たちが食い付くのも仕方ないかな」



進が止めに入らなければ、今ごろ有華は日下部を思いっきり殴っていて、次の日には停学が決定。それをネタに有華は東大受験を、



「待てよ」



引っ掛かることがある。この時期に性懲りもなく東大受験を打診される、つまり有華は、まだ願書を出していないと言うことだ。さっさと願書を出してしまえばあとは受験するだけ。教員たちも口出ししないはず。



「先生たちが納得しなきゃ願書って出せないのかな、学校側が出す書類もあるわけだし」



ひとりごとを言いながら進は大通りを進む。北風が顔に吹き付けて、耳が痛くなる。



「大崎のことばっかじゃダメだな。自分のこと頑張らないと」



有華のことばかり心配して、自分が受験に失敗したら笑えない。



有華とは違って帝二の問題は進には重すぎる。それを思うと、東大は出題教科も多く、難易度も段違い。そこに受かると思われているのだから有華の実力は文字通り計り知れない。



“帝二ならば東大のように教科も多くない。負担も少ない”



日下部の言葉が思い出される。



「…あっ」



電流が流れたかのように、進は気付いた。同時に進は駅に向かって走り出していた。
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