スマイリー
それが、一番大切なこの時期になって、進は伸び悩んでいた。


なかなか得点が上がらない。


国語が良くなったかと思うと、英語が悪くなるし、勉強をして英語がまた良くなったかと思うと、今度は逆に国語や歴史に悪影響が出たりする。


進の頭の中では、さながら公園のシーソーが、両端に英語と国語のテスト用紙を乗せ、ギイギイと耳ざわりな音を出して右に左に頼りなく揺れているようだった。


「ちゃんと勉強してる?」

進の焦りは感情を微妙に狂わせた。何気ない母の一言が最近は妙にうっとおしく感じる。


一旦意識しだすと、親から不安と期待の混じった視線を常に向けられている気がしてならない。家にいてもなんとなく居心地が悪かった。

進は焦っていた。
勉強しようとしても、また他の教科が下がるのではと考えたら、ペンを持つ手が止まってしまう。

進は現代社会でいう『コンクリフト(葛藤)』なるものをその身でひしひしと感じていた。
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