スマイリー
3人は歩きながらだらだらと他愛ない会話を続けた。



「本当だって。島根県って、今年いっぱいでなくなるんだぜ?」



あきらは、自慢の「島根県吸収合併説」を熱弁している。



「えー?嘘でしょ。本当っぽいですけど」



「『本当っぽい』って。それも失礼だな、島根県民に」



「あはは。そっか」



進の突っ込みで、沙優はまた笑った。



「でもこれ、最初はみんな信じるんだぜ?今日やってみなよ、教室で」



「いやですよ。あ、じゃあ進先輩。今日やってみてくださいよ。『島根県が鳥取県に吸収合併される』って」



「俺あきらと同じクラスだもん。あきらがやったときは誰も信じてなかったよ」



「信じてた!相川とか信じてた!」



「騙されるなよ、沙優ちゃん。相川は『可哀想だから信じたフリしてやった』って」



「あきら先輩、可哀想キャラじゃないですか」



「おいおい、沙優ちゃんまで、ひどいなぁ」



3人の笑い声が、冬の青空に響いた。太陽がやっと顔を出して、いつの間にか辺りは明るくなっていた。







進が、とりあえず沙優の相談を打ちきった理由のひとつと言うのはここにあった。



悩みを忘れること。とにかく笑うことだ。



もちろんそれで、問題が解決するわけではない。だが、笑うことで心持ちはいくらか変わる。



それがきっかけで解決の糸口を掴むこともあり得るのだ。まずはポジティブさが重要。



抽象的な考えだが、自信はあった。自分が実際に経験した解決方法だ。



進の問題―受験関係の悩みだが―それはまだ解決していない。だが、解決に向かって一歩一歩前進している実感が、確かにあった。



悩みすぎは負の螺旋に陥る可能性がある。問題を前にしたらまずはポジティブであれ。



あきらや、有華や、藍との関わりで体得した解決方法、というか、気構えのようなものだ。
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