スマイリー
9 思い出ゆらゆら
暦の上ではとうとう12月に入り、センター試験まで2ヶ月足らずとなった。



進のクラスの同級生の表情も、いよいよ本格的に引き締まってきている気がする。



「そう。ゆとり世代と言えども、やはり受験は戦争。足を引っ張り合い、蹴落とし蹴落とされの戦国時代なんだよ」



日本史の試験対策は、正味1時間の授業内で演習が行われるが、それでも時間が余る。文字通り暇を持て余したあきらが、前の席に座っている進に説教を始めた。



「競技的にはビーチフラッグだ。他校受験生という幾多の武将と戦いながら、なおかつ難攻不落の天守閣に立つ敵国の旗を裸足で誰よりも速くゲットする」



「分かりにくい例えのせいで途中からごっちゃになってるぞ」



今日の日本史の授業は、担当の教師が出張で、代わりに進たちの担任の岡田が演習用のプリントを持ってきた。



「授業終わる頃になったら解答と解説のプリントもってくるから」



そう言って教室を後にした。つまり、ほぼ自習の形になったのだ。
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