smooch【BL/完結】


「最近は何でもありよね。
逆チョコでも友チョコでも世話チョコでも」

頷きながらそう呟き、
母さんはヘラとボウルを流しに置いて湯漬けにした。


「だから一緒に作ろうか」

ね、と僕の手を取り台所へ立つよう促してくる。

同じ程度か、もしかすると、もっと酷い不器用だと僕は自覚がある。
そんな息子を巻き込んでも、状況はよくならないと思うんだけど……と思ったけれど。

流しに置かれた銀のボウルを見ると、
側面が焦げ付いているのが確認できた。
……多分、底はもっと酷いんだろう。
中身も、もちろん焦げているようにしか見えない。黒い塊だ。

せめて火にかけるんなら鍋じゃないかな?と、そう思えたので
ちょっとだけ、本当に少し、僕も参加した方が良さそうだと思った。
……というか、熱くはなかったんだろうか。


「……わかった」

そう返事して、手を洗い始める事にする。
空腹感はどこかへ消えたようだし。

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