桜の木の下で。

2学期

陸上部の夏合宿は中止になった。
「・・・」
「仁菜、一緒に帰ろう?」
「うん・・・」
2学期が始まって、1週間も経つのに・・・大野先生の姿を1回も見ていない。
「・・・大野先生、どうしたんだろうね」
「・・・有子」
「ん?」
「・・・大野先生の携帯の番号・・・知らない?メアドでも良いけど・・・」
「・・・仁菜」
有子は私の頭をポンポンと叩いた。
大野先生が学校に来なくなって元気のない私を有子は励ましてくれた。
「・・・大野先生ん家に押しかけちゃおうっか?」
「え?住所、知ってるの?」
「うん♪」

「・・・」
大野先生が住んでいるマンションの近くで、有子と別れた。
別れ際、有子は・・・『頑張れ』って励ましてくれた。
「・・・」
私は思い切ってインターフォンを押した。
「・・・」
すると、ドアが開いた。
「・・・東雲・・・」
「・・・」

「橘めぇ~・・・」
「・・・有子は悪くないんです」
先生は咥え煙草をしながら、麦茶を差し出す。
「・・・んで?何か用があったんだろ?」
「・・・何で・・・学校に来ないんですか?」
「・・・」
「それに、夏合宿も中止になっちゃったし・・・」
「・・・東雲、1つだけ聞いて良いか?」
「・・・はい」
大野先生は煙草の火を消した。
「・・・五十嵐の事、どう思ってる」
「え?五十嵐の事ですか?」
私は告白された時の事を思い出した。
「・・・クラスメイトだって・・・思ってますよ。それがどうかしたんですか?」
「・・・五十嵐は・・・お前と付き合う気なんか・・・無いんだぞ?!」
大野先生の一言で、私は立ち上がった。
「何で、そう言う嘘言うんですか!?」
「東雲・・・」
「嘘言わないでっ!!」
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