僕の愛した生徒


時間は更に過ぎていき

気づけば2月も間もなく終わり。


学校は、月初めから自由登校に入っている3年生がいないので、校舎が少し寂しく感じるが、

年度末に近づいた職員室は慌ただしい。



奈菜は相変わらず僕に笑顔を見せることはない。


それに寂しさを覚え始めた僕は



“仕方ない”


と、何度も自分に言い聞かせ、
心のつかえを拭い去った。


時に、抉られるように胸が痛むこともあるが、

僕はそれを仕事で紛らしながら、ただ堪えた。



いつか、奈菜が僕から離れていくことは分かっていた。

それが僕が思うより少し早かっただけ。



そう自分を納得させた。




そして、よく目にする秋山と奈菜の姿。


それに、僕はいつかした浅野先生とのやり取りを思い出す。



“高校生の好きなんて、どこまで本気か分からない”

“憧れと恋を履き違えているだけ”



浅野先生が言っていた言葉は

確かにその通りで、

奈菜も例外ではなかった。


現に奈菜は、僕と別れて間もないのに、既に新しい彼氏がいる。

たぶん、奈菜の浮気相手も秋山だったのだろう。


奈菜の気持ちは所詮、その程度のもの。


それなのに

奈菜の想いを真に受けて本気になった僕は……


なんて滑稽なんだろう。
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