僕の愛した生徒


奈菜の笑顔は、僕たちが出会った二年前と変わらない。

でも、もうそこにあの頃のようなあどけなさはなく、少女から女性に成長している奈菜。



僕は手を伸ばし、僕の隣で、再び桜を眺めている奈菜の手を握る。


奈菜を見ると、奈菜は桜を眺めたまま。



穏やかな風が僕たちを包み、奈菜の髪を揺らし、

奈菜の手が僕の手を握り返す。



僕は少し大人に見える奈菜のその横顔を見つめ、

そして、空を仰ぐ。





二年前のあの日

奈菜もあの桜の中で……


僕を見つけてくれていた。



きっと

あの瞬間から


僕たちの全ては


もう始まっていたんだ……






「奈菜?」

「なに?」


僕は、小首を傾げて見上げた奈菜の唇に唇をそっと重ねる。


唇を離すと、風が運んだ桜の花びらの中で、耳まで真っ赤に染めた奈菜が照れくさそうに微笑んだ。





『奈菜…好きだよ』
< 203 / 207 >

この作品をシェア

pagetop