目覚めた時に


「チセ、お前はずっと眠っていたんだぞ。3年間も・・・」


 お父さんが言う。

「皆、延命をあと少しで止めるところだったの。ホントに意識が戻って良かった。」


 心の底から二人は喜んでいる。

 彼もまた、

 言葉にならない感情が溢れそうなのか、

 目にいっぱい涙を溜めていた。
 



 「ヮワタシは・・・・ダレ?」
 




 微かに出た言葉はしっかりと伝わった。




一瞬で歓喜の表情は曇った。



「チセ。悪い冗談は止めなさい!!」



お母さんは険しい顔をした。


「あなたはワタシのお母さんですか?」


徐々に声が出るようになってきた。


 「私は、フカマチチセって言うの?」

 
 お母さんはその場に泣き崩れた。

 
 「チセ!」

 「深町さん。何か分る事はありますか?」

 医者が聞いてきた。

 「分りません。何も。」

 私は小さく微かに出る声で答えた。

 「先生!チセは治るんですよね?」

 お母さんは先生に必死に聞いた。

 何度も

 何度も・・・。


 「もしかしたら、事故の衝撃で脳に障害がある可能性が。」

 

 声にならない声でお母さんは泣き始めた。
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