エリートな彼に甘く奪われました
………。

もう、本当に心臓に悪い。

しばらくぼうっと動けなかった。

魔法にかけられたみたいに胸がキュッと苦しい。

いちいちズキュンって射抜かれる感覚が彼といる間、断続的に続いていたからもう腰が抜けそう。

自分のひとつひとつの仕草や視線、言葉が周りの人にどれだけ影響を与えているか、魅力的に映っているかの自覚ゼロだわ、きっと。

意外と天然系なのかな…?

私は色んな事を考えながら、ペタリと床に座ったままボンヤリとしていた。



フフッ、と小さく笑って振り返るとちょうど彼と出くわした。

「どうしたの、楽しそうだね。
お風呂、ありがとう。
とても温まったよ」

懲りずに、またしてもドキリとする。

何気ない兄の紺色のハウスウェアをここまで格好良くモデル並みに着こなすなんて、やっぱり普通じゃない。

髪も濡れた状態から乾いていつもの茶色く透けるサラサラヘアーに戻っている。

先ほどまでよりも、さらに格好良く見えて目を合わせる事すら出来ない。


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