プラトニック・ラブ




すると美沙はハっと我に返ると、



「あ、そ、そうだよね!」



胸の前で拳を作ったまま首を上下に振る。


それでも落ち着きのない美沙に、あたしは静かに告げる。



「そして深呼吸して」



そう言うと、美沙はあたしの言うとおりに大きく息を吸い込んだ。


こういうとき美沙が物分りの良い人で良かったと思う。



やっと落ち着いたのか、美沙は何度か深呼吸を繰り返すと椅子に座ってあたしに告げた。



あたしがこの言葉を訊いた瞬間、後悔することになるなんて知らずに。




「先生が探してる!」




「…え?」



あたしは首をゆっくりと傾げ、理解できないように意識を遠くに飛ばしてみようと試みる。


なんとなくだけど〝理解しない方がいい〟っと危険信号が出されたような気がしたからだ。



そんなあたしを美沙は本当に分かっていないと思ったのか、やはり慌てながらけれど曖昧に言った。



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