─仮面─偽りの微笑み

繭璃は棗に向かって歩きだしていた。



まるで吸い寄せられるかのように…。



ゆっくりと縮まった2人の距離。



「久し振りだな繭璃…」



どことなく寂しげな瞳を揺らし、繭璃を見つめて言った。



「……棗さん…わたし…」



言いかけた繭璃の目の前に、すっと差し出された真っ白な封筒。



そしてそれを繭璃に手渡した。



「…な…んですか?」



「招待状だ…婚約披露パーティーのな…」



「………っ…」



繭璃は招待状を見つめ動けずにいた。



「ちょっとお兄ちゃん!!いきなり何?さいてー…」



後ろで見ていた美麗は、慌てて2人に駆け寄る。



美麗を制して、棗は動かない繭璃の腕を掴み、引き寄せ耳元で何かを囁いた。



そしてチュッと、こめかみに口づけ静かにその手を離した。



「……ぇ?」



一瞬何が起きたか解らなかった。
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