─仮面─偽りの微笑み

ぼうっと棗を見つめる繭璃に、棗はふっと微笑って「じゃあな」と、一言残して車に向かい歩き出していた。



「ちょっ…お兄ちゃん!!」



美麗は兄に叫んだが、振り向きもせず車に乗り込む。



そして、走り去る車を見送ると振り返った。



招待状を持ち立ち尽くす繭璃。



「アイツ何考えてんのよ…」



「美麗ちゃん…わたし行く…棗さんが来いって言ったの…」



「でもっ…」



「心配かけてごめんね?でも大丈夫だからわたし…行きたい!」



そう言い切った繭璃の顔に迷いは無かった。



「棗さん…」



招待状をぎゅっと抱きしめた。



愛しい人の名をそっと呟いて。
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