黒猫*溺愛シンドローム
「浅海さんって、お兄さんがいたんだ?」
それは知らなかった。
そう言えば、浅海さんの家族の話って聞いたことないかも。
将来のためにも、ちゃんと知っておかないとダメだよね。
「そうそう。3つ…いや、4つ上、かな?」
「じゃあ…今、大学生?」
「いや…嵐士くんは大学には行かなかったから。」
俺の質問に、修ちゃんは静かに首を振った。
「全国模試のトップクラスの常連で、めちゃくちゃ頭よかったんだけど……」
それはすごい。
さすが、浅海さんのお兄さん。
「卒業と同時に、日本から離れちゃったんだよなぁ」
「留学、とか?」
「いや……」
なぜか曖昧に微笑む修ちゃん。
すごく言いにくそうなんだけど……何?
「“音楽は世界を救う”って言ってさ…」
「へ?」
「ギター片手に、飛び出して行っちゃったんだよ。」
「あー…ミュージシャンなんだ?」
「……いや。俺の知る限り、音楽の授業以外で楽器なんて触ったことないはず。ギターも新品だったし。」
それって……