CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
俺は、先程持ってきてくれた、朝食を置いてあるアンティークな、李朝螺細細工(ラデンサイク)の小盤(ソバン)《韓国の一人用のお膳》に、神経を集中して触れてみた。
すると、ハルモニ(お祖母さん)がハラボジ(お祖父さん)の為に食事の準備をしているビジョンが頭の中に流れ込んできた。
もう一度触れてみると、ハラボジがタラのチゲを食べながら
《美味い、お前の作るタラのチゲは最高だ!》
と誉めていた。
二人とも、まだ若いが間違いなくハルモニとハラボジだ!
ハルモニは、顔を赤らめながらも、嬉しそうにニコニコしている。
《昔から二人は仲が良かったんだなぁ》
なんて、ほのぼのとした気持ちになってきた。
だけど、なんか二人だけの秘密を、俺が勝手に覗いた様な罪悪感を感じて仕舞った。
間違いなく、サイコメトリーの能力がある。
次に俺は、ハラボジがやっていたみたいに、物体移動に挑戦してみた。
小盤(ソバン)の上にギターのピックを置いて、神経を集中して動くイメージを送った。
《巧くいかないな》
もう一度やってみる。
手をピックに近づけようと、右手をピックにかざしてみた。
10分近くやってみるものの、全然動かない。
腕がダルくなってきたので、今度は左手をかざそうとした瞬間に、ピックはピュッと飛んでいき、そのまま部屋の中央にある柱に突き刺さっていた。
《なんだ今のは!?
まるで、手裏剣の様に飛んでいったぞ。》
今度は、もう少し大きな物で試そうと、部屋の中を見渡した。
そして、ベッドから降りて、台所からコップを持って、もう一度小盤の上に置いて左手をかざした。
コップは、丸い小盤の上をスーッと滑り続けた。
俺は、頭の中で
《ミュート》
と言いながら、ギターの弦にミュートをかけるイメージをした。
コップは止まりかけたが、最後の瞬間に、またも壁に向かって飛んで行って仕舞った。
物凄い大きな音を立て、コップは砕け散ってしまった。
その音が、外まで洩れたのだろう。
アボジが、地下室に降りてきて、
『チャンス、どうした!?
何が有ったんだ!?』
「アボジ、大丈夫です。
ちょっと物体移動の練習をしていたら、突然コップが吹っ飛んで仕舞ったんです。
ちょっとビックリしたけど。」