Thus, again <短>
あの頃、数えきれないほど訪れた場所に辿り着き、僕は立ち尽くしていた。
その理由は、あの薄汚く古びたアパートが、真っ白なビルへと変貌してしまっていたから。
一面に張り巡らされた窓ガラスが、太陽の光を集め、反射している。
僕はその眩しさに、つい目蓋を細めた。
もちろん、たとえ此処に、あのアパートがあの日のままで存在していたとしても、
あの部屋に少女がいるわけもないことは、十分にわかっていた。
それでも、変わり果てた目の前の光景に、僕はつい、途方に暮れる。
ロマンチストは、予想外のシチュエーションには弱い。
僕は、記憶にはない真新しいビルに背を向けて、無意味に歩き出そうとする。
――その時だった。
「どこ行くの?」
大人びたその声に、僕は足を止め、声の方に向き直る。
刹那、胸の真ん中に確かな光が差し込んだことを認識して――