輝く季節へ

先輩


― でも、先輩も好きだった。
先輩にも恋をしてた。

それはもう、全力で。



 小学校四年生の春。
 始業式の後の渡り廊下で
ぶつかったあの人は、先輩だった。

六年生は、少しだけ大人に見えた。

もの凄く背伸びをしないと
近づくことができないくらいの、
差を感じた。
だからこそ強い憧れがあった。


一日過ぎる度に私の想いは増していった。
先輩の存在は私の中で大きなものになった。
時には『初恋の継続』さえ
途切れそうになった。
 廊下で、運動場で、
職員室で、学校の至る所で、
先輩に会えないかと期待を膨らませる。

 毎日確実に会える保証もなくて、
休日なんて全くと言っていいほど
チャンスはなかった。
気持ちが浮いたり沈んだり、
そんな一学期を過ごしていたけど、
もうじき終わりを告げる。


夏休みが来るのだ。
夏休み、それは恋する少女の敵なのだ。
 熱狂的なアイドルの追っかけ並に
先輩にはまっている私には、
夏休みなど必要ないと言えた。

そう、先輩に会えさえすれば、
それでいい。
だって、大好きだから。
毎日少しでも顔を見られるなら
それだけで学校へ行く気になるから。
期待感に満ちている感覚が心地いいの。

だから先輩を探したかった。
学校に、行きたかった。


 夏は何事もなく終わり、
二学期が始まる。

 夏休みの間私は日記をつけていた。
内容のほとんどが先輩のことだった。

『会いたい』『会えない』
『切ない』『苦しい』
そんな言葉で埋め尽くされた、悲しい日記。

もう、捨ててしまった。

 あんなに、あんなに大好きだったのに、
こんなにあっけなく終わってしまうなんて。
恋って一体ナニモノ?

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