輝く季節へ
 最後のプール授業。
プールかぁ。いいねぇ。
きもちいいねぇ。

何か泳いでるとさ、
魚になって自由気ままに
過ごしている気分になるの。

水の中を深く潜っていくと、
暑い日差しのことなんて
忘れてしまいそう。
水の中はまさに夢の世界だわ。

うちの学校の生徒は、
プールに入る前と出た後に
必ず浴びるシャワーのことを、
通称『地獄のシャワー』
って呼んでいたの。
私個人としては、
このシャワーが大好きなのよね。
地獄と名のつくものの、
これは天国だったわ。
地獄最高。



 最後の運動会。
何事もなく
自分が出る種目をやり終えた。
クラス対抗リレーも、
順位を変動させることなく走り終えた。
自分の所で抜かれたりしたら
最悪だもんね。
私は他の人のミスを
どうこう言ったりしないけど。




 最後の文化祭。
今年もジングは
男子のバンドのボーカルを務めていた。
去年のようなときめきは
まるで感じない私がいた。
クラスの女子の
黄色い声援に応えるように
大きく手を振る彼の笑顔を、
私はどこか
もの悲しげな心情で見つめていた。
この年のクラスの出し物は、
あまりよく覚えていない。




 そして卒業。
長かったようで短かった、
というお決まりのフレーズが似合う
三年間だった。

頭の中で回想していると、
映画のように
2・3時間に収まりきれないくらいの
出来事が蘇る。

鮮明な場面・そうでない場面、
私の記憶装置内のフィルムに
納まりきらない数の情報が、
一気に溢れ出す。

関谷君、ジング、直樹君の顔を
見納めのように眺める。

本当にこれで卒業なんだ。
信じられないね。
青春ドラマを見ているみたいに、
涙が・・・涙が出てくる。




 嬉しくも悲しくもないのに。


  決まりごとのように。


   ・・・泣くって
 
       おかしくなかった?



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