よゐしこのゆめ。
はぁ、と大きく息を吐いて、わたしはテーブルに伏せた。

顔は、フジと反対側に向ける。



「寝るなよ?」


「寝ないよ」


「今にも寝そうな顔してるけど」



わたしの背中側から、わざわざ顔を覗き込んできたフジは、そういうとまた笑った。


フジの笑顔は、葉の隙間から差し込む光みたいに、穏やかで、あたたかい……。



「別に良いでしょ」


「良くないし。せっかく話し相手が来たのにさー」



元の体勢に戻ったフジは、そのまま口を開いた。



「それに、思い出さないようにって嫌なことを封印したって、意味ないだろ。ある程度納得した上で忘れないと……。
何か、またきっかけができたら思い出して、苦しむだけなんじゃね?今の歩巳みたいに」


「……そうかもね」



少しなげやりに答えると、フジはその後何も言わなくなった。


さっきまであんなにうるさかったのに……。

これはこれで、調子が狂う。



「ねぇ、世間話しよ!」


「は?」



体を起こすと、意外にもフジはずっとこっちをみていたみたいだった。



封印したって意味がない……―――



その言葉の意味は、わかってるつもり。

でも、今は少しでも、封印しておきたい。



わたしは、眉間にしわを寄せるフジににこっと笑いかけて、勝手に話を続けた。

< 24 / 50 >

この作品をシェア

pagetop