よゐしこのゆめ。
蓋を開けると、そこにはティーカップのセットが3つ入っていた。
それは、2人の喧嘩の次の日にキッチンで見つけた物。
白地に藤色の細いラインが踊る、綺麗なカップ。
パパが記念に買ってきたのが、これ……?
「たまたま仕事の帰りに見つけてさ。ママといろいろ見て回ったけど、このカップを見た時みたいに惹かれる物が、正直なかったんだよ。
だから、衝動買いして……」
「ママは、大切な記念日の品物を勝手に買ってきたパパに、ちょっと腹が立っちゃったの」
「何で?」
「だって、こんな可愛いカップを一人で見つけて買ってきちゃうなんて……ずるいでしょ?」
わたしは、思わず大きな溜息をついた。
こんなにも長い間喧嘩してて、こんなにも重い空気を漂わせてた原因が、それ?
子どもじゃないんだから……
「じゃあ、もうママはパパのこと許してあげてよ?良かったじゃん、センス悪いもの買ってくるような旦那じゃなくて。わたしも、このカップ気に入ったよ」
「そうね。意地張るのもつまらないし……もう許すわ。ありがとう、努さん」
「良かったぁ……。ママに嫌われてたらって思うと、怖くて声がかけられなかったんだよ。歩巳も、ありがとな」
何か、手のかかる親だな……――――
1人前を気取ってそんなことを考えてから、わたしは目の前にあった唐揚げをつまんだ。
「ほら、2人も早く食べよ?せっかくの唐揚げ、冷めてるし。食べ終わったら、3人でこのカップ使ってお茶でもしようよ!ね?」
そう言って笑いかけると、パパとママは顔を見合わせて笑った。