AL†CE!
Ⅰ.アンダーランド

あのとき、
君の腕を掴んだのは、
どうしてだったんだろう。
ああせずにはいられなかった。
あれが、俺たちの始まりだったね。




「あーっ。つっかれたなあ今日も」
「まじで腹へった」
「大地とツートップやってられんのもあとちょい~」
「功は留年だろ」
「は?黙」

宮斗高校3年

サッカー部

杉原大地
(すぎはら だいち)
佐藤功
(さとう こう)


「っつかもう21時」
「な」

大地と功が2人、学ランにエナメル背負って、バスに乗るため改札階から地上に降りる階段の、1段目に足をおろした瞬間だった。


ドンッ


大地に、駆け上がってきた誰かがぶつかった。

少女、だった。

ダボダボなスウェットに
黒と白のスカジャン。
黒いフードからのぞく、長く金に近い茶髪は、巻いておろされている。

花の匂いがした。

一瞬、少女と大地は目があった。

とっさに、大地は少女の腕をつかんでいた。

「大地?」

功が不思議そうに聞いた直後、階段の下から罵声がとんできた。

「このクソ女ぁ!待てゴラァ!」

少女はあわてて振り返り、大地の腕を振り払った。

「放せよ!」

大地の腕からするりと自分の腕をぬくと、少女は改札の方へ走っていった。

下からは、サングラスをかけたスーツ姿の男が4、5人少女を追うように駆け上がってきた。

「何やってんだよ大地。お前あの子に殺されるかと思った」
「うちの高校の子だったろ」
「え?」
「2年の、有末さん」
「あぁ、あの美人の!?」
「絶対そうだった…」
「やばくね?なんかやらかしたのかな」

2人は顔を見合わせて、少女と、男たちを追った。


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