AL†CE!
そうだよ、と大地が声をかけようとした瞬間
「だーいちーっ!」
甲高い声と共に、
真っ赤な傘にひょこっと抜かれた。
「おー由梨子、はよ」
大地が、傘を持っていない手を軽く上げた。
くるりと赤い傘が回って、短い茶髪が現れた。
「おっはよ!」
由梨子の、佐柚の切れ長の目とは違って、くるんとビー玉のように丸い目が、大地をとらえて細くなった。
「なんだよ穴川、俺には挨拶なしか」
陵吾が口をとがらせた。
由梨子が、細めていた目を丸くする。
「何、鈴村いたの」
大地が吹き出す。
陵吾は泣くマネをした。
傘に雨粒が当たってボツボツと音を立てる。
朝だというのに灰色の雲が低く落ち、薄暗い、
気味の悪い世界だった。