AL†CE!

______

放課後

大地と功が昇降口を出ると、
ローファのつま先をとんとんしながら、
功が
「お、有末」
と言った。

見慣れないおだんごのせいで、
大地は気づけなかった。

白い首をのぞかせて、
佐柚は1人で歩いていた。

「有末、帰んのか~?」功が片手を伸ばして、佐柚の背中に手を振った。

見慣れた後ろ姿が振り返る。
声の主はわかっていたようだ。

「はい!先輩たちは、部活がんばって」

佐柚はいつもよりおとなしめな笑顔をみせた。

「な…」

大地が何か言おうとしているのに気がついたらしく、目をそらした。
そして小さくお辞儀をして、颯爽と歩いていった。

遠ざかっていく佐柚の背中は、
まるで知らない人のようだった。

「…なんだ、あいつ」
「ねぇ、今さらかしこまっちゃって」

大地は
佐柚が消え、他の生徒たちの流れるように吸い込まれていく校門を見据えた。

生徒たちの、がやがやとした声で、むしろ辺りは無音のように思われる。

人の波の中に、
こうして2人取り残されるのは、初めてではなかった。


『先輩たちは、部活がんばって』


「“先輩”ね…」

ひとりごとのように呟いた大地の背中を
功がぽんっと叩いた。

< 77 / 159 >

この作品をシェア

pagetop