卒 業
この見えない道を、何人の人が通ったのだろう。
それぞれが、どんな思いで歩いて行ったのだろう。
その中の一人くらいは……私と同じ気持ちだったりするのかな。
 
階段を上って、先生の前に立つ。
渡された卒業証書を、右手、左手、と取った。
少なからず、予行であっても緊張するものだ。
心臓が、少し早い。
 
一礼して、再び階段を降りた。
まだ、私の手に渡ることがない卒業証書をまじまじと見て、待機していた先生へ渡した。
 
これで、卒業じゃないんだよね。
 
明日まで待てない自分と、明日が来なければ良いのにと思う自分に矛盾を感じた。
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