卒 業
 
「だよねー。あの時はさー」
他愛もない話をしながら、お酒を呑む二人。
昔話に華を咲かせた。
そして、いつしか話題は、卒業式の話になっていった。
 
「そう言えばさ、予行の時とかも泣きそうだったかも」

今じゃ笑い話だが、あの時は切なくて仕方なかった。
彼はそれに対して、
「それは行き過ぎだろ」
と返す。
お酒の入った私は、若い頃に戻った時のような気分で、頬を膨らませ、拗ねた。
 
「あの時は、友達と離れるのが寂しかったのよ」
「そう言えばさ、みんなどうしてるんだろうな。連絡取ってるか?」
「ぅん?」

もちろん連絡は取って居た。
「祐也は取ってないの?」
「何か色々忙しかったからさ。なかなかね」

苦笑いを浮かべる彼。
その笑みは、あの日を思い出させた――。
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