神の使者
「優香」
女は校門から出て来た一人の生徒に声をかけた。
「…お母さん?」
女の娘は母親の姿を見て呆然と目を丸くした。死んだはずの母親が目の前に現れたのだから無理もない。
「優香…ごめんなさい」
女が謝った瞬間、娘は鞄を放り投げ女の胸に飛び込んだ。
「お母さん!」
「ごめんなさい…ごめんなさい」
女はひたすら謝り続け、娘は女の胸で声を上げ泣き続けた。
お互いずっと会いたかったのか、お互いの存在を確認するようにいつまでも抱き合っていた。
しばらく泣き続けていた娘は顔を上げじっと母親を見つめる。
「どうして?お母さん、死んだんじゃ…」
「神様がね、少しだけ優香に会ってもいいと許してくれたの」
「お母さん…どうして私を置いて行ったの?」
その質問に女は辛そうに一瞬だけ顔を曇らせ、真っ直ぐ娘を見つめる。