神の使者
達也が零の力で移動したのは、マンションのある一室だった。
どこかの家庭の家のようで、達也は畳が敷かれた部屋にいた。そして、部屋には達也の他に十歳ぐらいの男の子がいた。
零から聞いた情報では確かこの子だ。
「えっと、斉藤 祐介だっけ?」
家族とキャンプに行った時、誤って川に転落し死亡したと聞いている。
「まだ子供なのに可哀想だな」
と言っても達也と同じように、もうどうする事も出来ない。
達也がしてやれる事は祐介の願いを叶えてやり、神の元へ送ってやる事だ。
「お前を神の元へ送ろう」
達也が声をかけると、祐介は顔だけ振り向いた。目の大きな可愛らしい子だ。
「お兄ちゃん誰?」
「お前を神様の所へ連れて行く人だよ」
「そう…」
祐介は寂しそうに俯き呟く。やっぱりまだ家族と離れるのは辛いよな。