赤い狼 壱





塚、お弁当とか持ってきてない。朝ごはんも食べてきてないのに。


手探りでバックの中身をわさわさと探る。



……げっ。




「さ、財布忘れた…。」




購買で何か買おうかと思ったのに!




朝ごはんなし。お弁当なし。財布なし。に、かなりショックを受けて足を止める。



そんな私に更に追い打ちをかけるように



ギュルルルル…。



お腹が地響き並の音を立てた。


そりゃそうだ。だって朝から何も食べてないんだから。



携帯を覗けば時間は11時で。




「昼、じゃん。」




なんだか悲しくなってきた。




畜生、畜生!これも全部、一人暮らしのせいだ!



苛立っている私は今日の不運を高校からの一人暮らしのせいにして、スクバをリュックみたいに背負って走る。



普通の家ならなかなか起きてこない私を起こしてくれたり、朝食とお弁当用意してくれたりしてくれてるのに!



実と香の話をふと思い出す。



この前、寝坊してるのに起こしてくれなかったと実は愚痴を溢していた。



香はお母さんの手作り弁当がキャラもので凄く可愛くて照れる、と頬を赤らめながらも美味しそうに話をしていた。


その時、正直いいな、と羨ましく思った。




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