赤い狼 壱





怒りを抑えるためにこめかみにそっと指を添える。



あぁヤバい。今日から女子全員睨んでしまいそう。

怖い怖い香と実以外の女子を。




「あ。あとね、ラッチョ先生は

「今日は白兎、説教だな。」

って言ってたよ~?」





オワタ。





「そんな…。」




説教って説教って。マジですか。ラッチョ先生の説教とんでもなく長いんだよな。



前に一回、たまたま普段使わない教室で鏡に向かって一生懸命カツラしてるの見かけて噴いたら、正座したまま四時間怒られてキツかったんだよな。


立った瞬間、まるで生まれたての小鹿のようだと自分で感動したのを覚えてるよ、あれは。




ガックリと肩を落とす。あ、でもなんかそんな体験って普通できないよね。先生がカツラつける所なんてそうそう見れないよねー。




「まぁさ、昨日のカラオケの分だと思って~!」



「はぁ!?許してくれたんじゃなかったの!?」



「勝手に帰ったのは許すって言ったけどぉ~、合コン台無しにしたのは許すって言ってないよ~?」





……お、鬼。




実が悪魔なら香は鬼だ。間違いない。


きっと前世は凄く怖い生物だったに違いない。





< 155 / 299 >

この作品をシェア

pagetop