赤い狼 壱
口を尖らせる連に苦笑いを溢す。読書感想文をも知らないとは稚春お姉さんもビックリだったな。
読書感想文ってね、夏休みの宿題で出されると誰もが最も嫌う宿題ランキングの三位以内には絶対に入るんだよ、分かった?連くん。
と、
「……あの女嫌いの連がお姫様抱っこ?」
艶やかな声が私の耳に入ってきた。
「いや、何かの間違いだろ。」
「いやぁ。青春ですね~。」
それに続いて落ち着きの中に動揺が混ざった声、相変わらず陽気な声が部屋に落ちていく。
昨日ぶりでも変わらないんですね。そう言ってやりたかったけど無理だった。っていうか出来なかった。ある人物が怖くて。
「……おい。今のはどういう事だ?稚春。」
鬼のような顔をしている隼人が。
えと…何で怒ってらっしゃるんでしょうかねぇ。
取り敢えず呑気に心の中で呟いてみて隼人を見る。
その間に連がようやく私を降ろしてくれて、遅いんじゃコラ、と罵って蹴りを一発かましたかった。
だけれどそれを出来る雰囲気じゃない。なんだか知らないけど隼人がものすごく怒っているからそれが出来ない。
(私、なんでこんなに睨まれてるんだろう。)
嗚呼、現実逃避したい。
「―――お姫様抱っこしてただけ。」