初恋フレーバー
「リンク早くっ。
私まで遅刻するでしょっ」



青希は後ろに

またがろうとした。



「あっ…あぁ
わかった…」



しかし、

途中で止めた。



「いやっ…
やっぱり俺がこぐ。
春香後ろ乗って」



「えぇー。
まぁしょうがないか。
今日はこがしてあげるよ」



残念そうな顔をしながら、

春香は後ろにまたがった。



「しっかり掴まってて」



「はいっ」



青希がペダルに足を乗せ、

力を込めようとした瞬間、

春香の腕が

青希の腰にまわった。



青希の意識は

一気に背中へと

もっていかれた。

背中に感じる

春香の感触以外は

何も感じない。



青希は懸命に

ペダルをこいだ。

自分の理性を保つために。



「すごいっすごいっ
速いよーきゃぁー」



そんな青希の気持ちを

知ってか知らずか、

無邪気にはしゃぐ

春香はさらに強く

腰を掴んだ。



緊張は最高潮。

激しく波打つ鼓動は

もちろん自転車の

せいではなかった。



そして

2人を乗せた

自転車は、

校門を走り抜けた。



「こらっお前らー、
二人乗り禁止だぞー」



「ごめんなさーい」



怒鳴る教師の横を

通り過ぎる2人の声は、

1つになっていた。



「なんとか間に合ったね」



「うん…
春香がいなかったら
絶対に間に合って
なかったよ」



駐輪場に着き

自転車から降りた

春香は含み笑いをした。



「先生…怒ってたねっ」



「うんっ怒ってた」



2人は顔を見合わすと

同時に笑った。



青希は喜びを感じていた。

初めて見る春香の

意外な一面を見れたから。
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