「大丈夫、逢いたくなったら空を見上げて」

少しの疑問は生まれるけどそれを問い掛けたりはしない。

そのまま、気づかなかったフリをして。すれ違おうとした時。

ふ、と。

彼があたしを見た気がした。

すれ違って数秒後、そんなはずないと思いながらわずかな期待が首を振り向かせる。

その時、彼の瞳が一瞬、ほんの一瞬あたしの目に映った気がした。



わかっているから。期待なんてしないの。

住む世界が違うとか、関わってはいけない人だとか、そんな簡単な理由じゃなかった。

ちょっとでも期待してしまったら。視線を交わしてしまったら。

このままでいいなんて思えなくなってしまう。
あたしがあたしじゃなくなってしまう。

なにもわかってなんかないくせに、わかったフリをして、強がってばかりいた。

強いあたしじゃなきゃ、ダメなんだって。

ずっと、ずっと、ずっと‥‥‥そう思って生きていた。

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