あたしの愛、幾らで買いますか?
「あの雑誌に写ってるの、
 俺とあゆだよ」


彼はあたしの目は見ずに言った。

やっぱり、

朔羅は滝川春人だったのだ。


「あゆにバレちゃったか…」


彼が呟いた。

バレたらいけなかったのかな?

あたしは、どんな朔羅でも

好きなことには変わりないのに。


「ごめんね。
 あゆ巻き込んじゃって」


やっと視線を絡めてくれた朔羅。

あたしは口の端っこをキュっと上げて

首をゆっくり左右に振った。


「歩美は、どんな朔羅でも
 好きだよ?」

「そっか」

「うん。
 朔羅さえ嫌じゃなかったら、
 今まで通り好きで居ていい?」

「勿論。
 じゃ、俺そろそろ仕事だから」

「うん。頑張ってね」

「遅くなるようだったら連絡する。
 …ってこのやり取り、
 夫婦みたいだな」

「ね!」

「テレビとか好きに見てていいよ。
 奥の部屋にDVDとかあるし。
 じゃ、いってきます。
 いい子にしてるんだよ」

「いってらっしゃい」


彼は笑顔の残像を残して

部屋を出て行った。


あたしは硝子のテーブルの上においてある

テレビのリモコンを手に取り

電源を入れた。


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