あたしの愛、幾らで買いますか?
「…安藤」

「ん?」

「ごめんだけど、
 約束破ってもいい?」

「は?」


笹井は壊れ物を潰さないように

優しくあたしを抱き締めた。

そして、

耳元で囁いた。

あたしは、その言葉に

涙を零した。


ねぇ、笹井。

どうして、あたしが欲しい言葉を

あんたが知ってるの?

あたしが欲しかったのは

その言葉だよ…―。


―俺が、ずっとお前の傍に居る。
 俺は消えたりなんかしない…


笹井は優しく抱き締めるだけで、

それ以外あたしには触れてこなかった。


あたし、今すぐは無理かもしれないけど

なんとなく希望が持てる気がするよ。


だってね、

笹井の言葉の中に

ほんの少しだけ

微かな光が見えたんだよ。




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