六天楼の宝珠〜亘娥編〜
断られたらと内心気が気ではなかった翠玉は、そうと知られぬ様息を吐いた。黙って庭に控える阿坤を待たせて、房内に入る。
「座らないのですか」
長椅子の空いた部分をちらりと見るものの、腰を下ろすのをためらっていると怪訝そうな声がした。
「いえ……すぐにお暇しようと思っていますので」
「立ち話も忙しないでしょう。それとも、何か急ぎの用事だったのですか?」
これから執務に向かう時間のなさを配慮したつもりの言葉だったのだが、どうも雲行きが怪しくなってしまった。慌てて碩有の隣に座る。
「急ぎといいますか、早い方がいいと思って」
仲直りは。
きっと自分は、先に仲直りをしたかったのだと気付く。
季鴬の話もいい口実でしかないのではないかと、いざ会いに来てみるとそう思えた。
だが今さら引っ込みも付かない。傍らの人物が「じゃあ早く話せ」という苛立たしげな気配を放っている。
こんな冷たい態度は久しぶりで、どうしていいものか判断に困った。
「実は季鴬様からお招きを頂きまして、鉦柏楼にお邪魔したいと思うのですが」
許可を頂けませんか、そう続ける前に「駄目です」という返事が返って来た。
「ど」
理由を聞こうと尚も口を開いた翠玉は、夫の表情を見てそのまま何も言えずに閉じるしかなかった。
これはものすごく怒っている!
「……こんな時間にやって来るかと思えば。貴方はよほど他人が気に掛かるのですね」
「座らないのですか」
長椅子の空いた部分をちらりと見るものの、腰を下ろすのをためらっていると怪訝そうな声がした。
「いえ……すぐにお暇しようと思っていますので」
「立ち話も忙しないでしょう。それとも、何か急ぎの用事だったのですか?」
これから執務に向かう時間のなさを配慮したつもりの言葉だったのだが、どうも雲行きが怪しくなってしまった。慌てて碩有の隣に座る。
「急ぎといいますか、早い方がいいと思って」
仲直りは。
きっと自分は、先に仲直りをしたかったのだと気付く。
季鴬の話もいい口実でしかないのではないかと、いざ会いに来てみるとそう思えた。
だが今さら引っ込みも付かない。傍らの人物が「じゃあ早く話せ」という苛立たしげな気配を放っている。
こんな冷たい態度は久しぶりで、どうしていいものか判断に困った。
「実は季鴬様からお招きを頂きまして、鉦柏楼にお邪魔したいと思うのですが」
許可を頂けませんか、そう続ける前に「駄目です」という返事が返って来た。
「ど」
理由を聞こうと尚も口を開いた翠玉は、夫の表情を見てそのまま何も言えずに閉じるしかなかった。
これはものすごく怒っている!
「……こんな時間にやって来るかと思えば。貴方はよほど他人が気に掛かるのですね」