虹が見えたら
けれど、真樹の会社にとってはかなり大きな仕事でもあることもなるみにはわかっていた。


「名前だけでいいんですね。
私が理解できていないことを勝手に進めたお仕事はすべて無効にしていいという念書をください。」


「ほぉ・・・難しいことを知ってるんですね。
いいですよ。お互いに内容をよく理解した上で仕事は進めていきましょう。
それはこちらがいちばん望んでいることでもありますしね。

あ、ちなみに建てていただく寮の管理人ですが、私に決まりましたのでよろしくお願いしますね。
これはいちおう私の名刺です。」


『城琳学院中学校、城琳学院高等学校、事務室長 沢井響。』


「あっ・・・かなり偉い人だったんですね。」



「あははは。かなり偉い?そんなことありませんよ。
数字にまつわることは昔から好きだったけど、僕は須賀浦さんみたいに優秀で会社を起こせるほどすごくはないし、理事長の親せき筋というだけで置いてもらってますから。

せっかく運命の人に提供された仕事ですから、いっしょにやっていきたいなと思ってます。

じゃ、とりあえず今日は顔見せだけでいいですか。
申し訳ないですが、これから会議に出ないといけませんので。

そのかわり、次回はもっとたくさん時間をとれるように約束を・・・」



沢井はなるみから書類を一式取り上げると、なるみを抱き寄せた。


「おや。運命の人は挑発的だなぁ・・・。
いや、頭がよくて先が読める人なのかな。
わざとすぐ見えるようにキスマークとはね。

ますます気に入りました。
次回はたくさん時間をとって話し合いましょう。では。」



沢井は笑みを浮かべると携帯電話をなるみへ返して去って行った。


「えっ・・・電話きれてない。
もしもし・・・?」



「なるみちゃん!何もされなかったかい?
運命の人ってどういうこと?」


なるみは真樹と伊織と温泉に行ったときからのことを話すしかなかった。
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