虹が見えたら
男子寮の担当者
翌日、なるみは地図を見ながら城琳学院へとたどり着いた。

真樹の説明どおり、校舎の見た目もきれいで守衛さんの応対もとてもよかった。


事務室の端にある応接セットに案内されたなるみは、座って担当者を待っていた。



「お待たせしてすみません。城琳学院にようこそ・・・あれ!君っ」


なるみが慌てて相手の顔を見上げると、温泉地で助けて修学旅行でお金を払ってもらった沢井響が目の前に居て、なるみを見て驚いている。



「あ、そうだ。城琳学院ってきいたような・・・って思ったらあなたの・・・。」


「驚いたなぁ。須賀浦さんが怪我されたからその代理の人って聞いていたけど、まさか高校生の君がねぇ・・・。
3度目ともなると、もう運命としかいえないかな。

で、いったいどういうトリックなの?」


「トリックとかじゃなくて、私は須賀浦真樹の身内というか秘書というか・・・家族なんで、昨日これをここに届けるように頼まれて。
嘘じゃないですよ。何なら携帯で電話かけますから、本人に確かめてください。」


沢井はなるみの携帯電話を手にとり、真樹と話をした。


「はい、なるほど・・・そうでしたか。
見積もりや書類の中の条件なんですが、1つお願いがあるんですけどかまいませんか。

おたくの会社の担当者は山田なるみさんでお願いしたいんですけど。
了解してもらえないなら、別の業者に頼むことになります。」


「えっ!!待ってください。私は正社員じゃないですし、担当者レベルの話なんてわかりません。」


「説明云々は須賀浦さんがきてもいいし、別の人がきてくれてもいいじゃないですか。
僕はあくまでも窓口になるのは山田なるみさんでとお願いしてるんです。」


電話の向こうで真樹が大声で何かを言っているのが、なるみにはわかった。

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