虹が見えたら
なるみは確かに沢井がスーツを脱ぎすてて海岸を走ったりすることは想像できないだろうと思った。
目の当たりにしたなるみ自身も信じられなかったくらいだから、真樹には信じがたいだろう。
でも本当のことなのだから、どうやって説明したものか・・・と思ったとき。
「嘘じゃないな。そうか・・・。」
「えっ?」
「なるみが嘘を言ってないことがわかるから、嫌な気分だ。
あの沢井が平日の昼間になるみと海岸でじゃれて遊んでしまうほど、仕事をほったらかしているということだ。」
「あっ・・・私のせいで・・・。
でも、就職して初めてのサボリって。」
「それを喜んだのか?」
「うん。ごめんなさい・・・。単純にうれしくなってしまって。
きっと学校での立場が悪くなってますよね。」
真樹はなるみの腕をつかんでシャワー室の中に入っていき、シャワーから勢いよく出るお湯をなるみの頭へとぶっかけた。
「きゃあ!!」
「色落ちするのが嫌なら脱ぎなさい!」
「そ、そんなぁ!」
「沢井と何もなかったというなら全部脱げるだろ。
それとも、見せられない傷でもつけられたのか?」
「さっき嘘言ってないのがわかるって言ったのに・・・あっ。」
真樹の表情が以前、大人のキスをしたときと同じかそれ以上に冷たいことに気付いたなるみは、言われた通りにしないと怖いと思った。
怖いしドキドキするしでためらいながら、ブラウス、シャツ、デニムパンツを脱いで下着姿になった。